反レイシズム関連を中心に適宜更新します。


by ryangyongsong

長谷川豊の立候補じたいが許されない理由――政治空間からの差別煽動の恐怖②

長谷川豊が日本維新の会から正式に出馬すると発表された。透析患者への差別を煽動する長谷川の出馬に、当然多くの批判の声があがっている。

ただ、そのような批判の声に、次のような苦言があった。

引用すると、

「正気の沙汰ではない」というコメントが散見された。

気持ちは分かるのだが、私の考えは少し違う。

この手の人は、最後は政治家を「目指すしかない」状態になるものだ。さらにそれを持ち上げようとする政党も現れてもおかしくはないわけだ。あの「人工透析患者殺せ」的な言説にしろ、支持してしまう政党と有権者はいるわけだ。テレビで局アナで、最近までレギュラーを何本も持っていた人は便利なのだ。

むしろ問われるのは、有権者の正気であり、民主主義だろう。ポピュリズムの時代だ。民主主義の副産物、コストとしてのポピュリズムが世界を席巻している2010年代。「この人が立候補しちゃうのね」「当選しちゃうのね」ということが世界中で起こっている。

今度の衆議院選においても、唖然とするような立候補者が登場することだろう。

あれだけ炎上してしまった彼だが、立候補する権利はある。日本維新の会が誰を擁立しようと勝手だ。

私は民衆の意志を信じて、「正気の沙汰ではない」という言葉を保存しておくことにする。彼が当選することがあったら、こう言うことにしよう。

「正気の沙汰ではない」と。

この記事にはいくつもツッコミどころがある。

1.

たとえばポピュリズム云々のくだり。拙著第五章で書いたとおり、欧州で「極右ポピュリズム」とよばれているのは、日本の極右とはまったく違う質をもつ。
欧州は極右・レイシズム・歴史否定への法規制や社会の猛烈な批判によって、従来の極右は、暴力的な活動や露骨な差別ができなくなっている。そのため宗教批判やグローバル化批判という「高等戦術」を使っている。それが「極右ポピュリズム」だ。
日本の場合、ポピュリズム以前である。なんの差別禁止法もなく、極右や歴史否定の規制もない。社会的批判も極めて弱い、先進国唯一のレイシズムフリー国家なのだ。
だから欧州の極右と日本の極右は、じつは無条件に比較できるものではない。

だからこそ、長谷川豊のような透析患者への差別煽動を開き直る人物が、公的な政党から立候補できるのである。

2.

だから、常見氏のこの箇所は特にいただけない。

あれだけ炎上してしまった彼だが、立候補する権利はある。日本維新の会が誰を擁立しようと勝手だ。
いや、欧州のようにレイシズムや極右がNGになっている社会では、こんな人物はおいそれと立候補できない。相当な社会的批判にさらされるので、ここまで易々と立候補できない。レイシストはそういう次元で叩かなければならないものとされる。

上の一文は、次の三つの重要な問題をスルーしている。

1.確信犯的レイシスト・極右には立候補する途を開いてはならない。社会的には絶対に許すべきでない。

2.公的な政党がレイシストを擁護することは差別を煽動するため、人種差別撤廃撤廃条約に反する。

3.日本維新の会じたいが極右・レイシズム・歴史否定の煽動を行っている政党。つまり普通の政党ではない。


常見氏は著名人として、すぐにでも長谷川氏を批判すべきだと、私は思う。



と、こう書いたところで、日本社会では「???」という反応が返ってくるのではないだろうか。

「常見氏は長谷川豊氏を批判しているはず。ただ、選挙に出る自由だけは誰であろうと否定してはならず、差別と極右に反対したいなら、選挙結果で示せばよいではないか、と言っているだけではないか。そこまで批判して、いったい何になる?」

そういう反論が返ってくるのだろうと思う。

しかし、この批判には意味がある。
私と、常見氏の文章のあいだには、ある見過ごせない断絶が露呈しているからだ。
それは、欧米型人権規範(反レイシズム規範)と、戦後日本型社会規範との、断絶なのである。
両者は、水と油である。
前者の欧米型人権規範は絶対的正義、後者の戦後日本型社会規範は(人権規範なき)日本型の相互理解・コミュニケーション・「和」である。

何が問題なのか。

それは、戦後日本型の社会規範が、欧米型の人権規範と、真っ向から対立する点にある。
なぜなら戦後日本型の社会規範のキモは、バラバラの個々人が、たがいに平等に、相手に伝わるよう努力して、話し合いの中で「自然に」ものごとを進めていく点にあるからだ。いいかえれば欧米型の、社会が普遍的に守るべき特定の絶対的なルールは、個人の自由という見地から絶対につくらせないという規範だといってよい。

と、こうやって書いても、ピンと来ないと思われる。
だが時間がないので、機を改めて書くことにしたい。



[PR]
by ryangyongsong | 2017-02-06 21:35